手本記事②:「silent(サイレント)」登場人物「優生」の名が炎上した3つの理由 優生保護法から引用?

2022年10月6日(木曜日)より放送をスタートし、12月22日の最終話に至るまで、大きな反響を集めたフジテレビ系ドラマ「silent(サイレント)」。

ギャラクシー賞の2022年12月度月間賞を受賞するなど、非常に高い評価を受ける同作ですが、視聴者やSNSの間では、とある登場人物の名前をめぐり、ちょっとした炎上を巻き起こしているのはご存知ですか?
そこで、この記事では、ドラマ「silent(サイレント)」に登場する子供の役名「優生(ゆうき)」に対し、なぜ多くの批判が集まっているのかを解説します。
その前に、まずは、ざっくりとドラマ「silent(サイレント)」のおおまかなストーリーや、主要な登場人物を紹介していきます。
すでにストーリーやキャスト陣を把握しており、役名にまつわる炎上の経緯のみを読みたい方は、目次から読みたいパートへ適宜移動してくださると幸いです。
目次

ドラマ「silent」の登場人物

青羽紬(あおば つむぎ)

演:川口春奈
…本作の主人公で、中途失聴に悩まされる同級生・佐倉想と交流する為、自身も手話を習得する

佐倉想(さくら そう)

演:SnowMan・目黒蓮
…高校卒業後に若年発症型両側性感音難聴を患い、交際していた紬にはそれを告げない形で破局。社会人になると再び紬と出会い、距離を縮めていく

井草華(いぐさ はな)

演:石川恋
…旧姓は佐倉で、想の姉。弟の病が遺伝することを心配し、結婚後の出産を躊躇するが、後の検査で、新生児「優生(ゆうき)」には障害が遺伝していないことを医師から告げられる

佐倉想の甥「優生」の名前が炎上した理由

後天的に難聴を患い、後に完全に聴覚を失った想ですが、その姉・華が、弟の病の遺伝を恐れながら自身の子供を出産。結果的には障害は遺伝せずに済んだものの、その子供を「優生(ゆうき)」と名付けたことが物議を醸しました。
これは、“障害者差別“とも非難され、1996年まで施行された「優生保護法」からの引用を疑われた為です。

炎上理由①:「優生保護法」との関連

この「優生保護法」とは、身体的に問題のない優秀な遺伝子のみを保護し、逆に能力の劣る遺伝子は排除していこうという、優生思想をベースにした国の政策の一つ。
もちろん、表向きの施行理由は「母体保護」ですが、もう一つの理由が欠陥やハンディキャップを持って産まれてくる子供を少なくしていき、“健康な子供だけを出産しましょう“という意図を含んでいます。
障害を持つ人に強制的に中絶や不妊手術をさせる条文も備えているなど、“差別的“だと揶揄されても仕方のない政策でした。
つまり、劇中で難聴の遺伝リスクがあった華の新生児は、かつての「優生保護法」下では、もしかすると出産を強制的に阻まれていた対象だったかもしれないわけですね。
結果的に遺伝はなく、元気に産まれてきたわけですが、そこで華が付けた名前が優生(ゆうき)だったことから、どうしても優生保護法からの引用を指摘されてしまうのは当然でしょう。
「単なる偶然ではないか?」とする声もありますが、確信的だと思わせる原因として、「silent(サイレント)」の脚本担当・生方美久の過去のキャリアが関係しています。

炎上理由②:助産師だった「silent」脚本家・生方美久

2023年2月28日に配信されたライフスタイルメディア「りっすん」のインタビューでも、
生方氏について、
「もともとは助産師として働いていたものの、『今の仕事に向いていない』という悩みから脚本を書き始めた生方さん」
との説明があります。
また、これまでにも、かつて助産師として働いていたことを何度か公言している彼女。職業柄、「優生保護法」を知らないはずはなく、難聴のリスクがあった新生児に「優生」と名付けることの意味や反響をある程度は予測できる立場にいたとも考えられますね。

炎上理由③:字幕で初めて判明した「優生」の漢字表記

劇中で、華は「優しく生きてほしい」との願いを込めて、「優生」と名付ける場面がありました。
しかし、当然ながら、ドラマ本編の中では「ゆうき」の漢字が「優生」になっているとは視聴者には知らされず、それが判明したのは字幕でのこと。
そうした点もまた、“何らかのメッセージ性を感じる“との理由で波紋を呼んだわけですが、
名前を「優生」としたことについての意図は、最後までドラマ側、生方氏側から一切の説明がないまま終わりました。
しまいには、「特定非営利活動法人」が「silent」を放送した「フジテレビ」と「放送倫理・番組向上機構(BPO)」に対して、抗議の意見書を提出する事態にまで発展しています。
もちろん、脚本家がわざわざ細部の意図などを視聴者に説明すること自体が稀ですが、
「silent(サイレント)」という作品が非常にセンシティブなテーマを扱っているだけに、一定の物議を醸してしまうのは仕方がないといえるかもしれませんね。
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